アルゼンチン便り NO.9 (海外の会員からの通信)

画家 酒井 和也さん

アルゼンチンには今、日系の方が約3万人暮らしています。

ブエノスアイレスの中心地サンタフェ通りに“IKEBANA”という大きな花屋さんがあります。ご主人が、私の配属先の顧問会の メンバーで、佐賀県出身の在亜日系2世の方です。私と同郷ということで声をかけていただき、お話を伺っていたところ2001年に亡くなられたお兄さん酒井 和也さんが芥川竜之介の「羅生門」、「河童」他、上田秋成の「雨月物語」、鈴井大拙の「禅とは何か」、太宰治の「斜陽」、三島由紀夫の作品などを翻訳され た翻訳家として活動され、また画家としてメキシコ、北米、ヨーロッパで活躍された話を聴きました。ちょうど在亜日本大使館の文化センターで日系のパイオニ アとして酒井和也さんの紹介コーナーがもうけられ、翻訳された本、絵画作品や写真が展示されています。

今回は画家酒井和也さんを簡単に紹介したいと思います。

酒井和也さんと翻訳された本

酒井さんは1926年ブエノスで生まれ、1938年に日本のご両親の実家(佐賀)に兄弟で訪れましたが、第二次世界大戦のため帰 亜することができなくなり、日本に留まることになりました。ここにも戦争の影響を受けた人たちがいたのです。終戦も日本で迎え、1950年にアルゼンチン に帰ってくる前は、早稲田大学の文学部に在藉し、東洋美術を専攻されましたが卒業はしてないそうです。アルゼンチンに戻られてすぐトゥクマン大学、ブエノ スアイレス大学で美術の教授として迎えられ、その後、在ブエノスアイレス日本大使館の文化部に勤務するかたわら、雑誌“文化”を発行されました。

1963年から64年ニューヨークの大学に招待教授、1965年から67年までメキシコ国立大学、その後、サンアントニオ、オー スィン、ダラスにあるテキサス大学で美術の教鞭をとりながら創作活動を続けられ、2001年ダラスで亡くなられています。外国暮しが長かったためメキシ コ、北米、ヨーロッパでは有名でしたが、アルゼンチンでは亡くなられてからまた注目され、今年の4月にはブエノスアイレス市立文化会館で作品展が開かれ画 集も本屋の店頭に並べられています。

作品は抽象画で、時代によって描き方、形は変化していますが、どの絵にも日本人が持っている色彩感覚、しっとり感があります。水 彩、墨を使った作品は日本の風土を幼少に経験した人だから描ける作品だと思います。

1958年ベルギーで、1960年、1961年アルゼンチンのアート展で金賞受賞されています。

作品はアルゼンチン、メキシコ、北米、スペイン、ベルギー、コスタリカ、ベネズエラ、ブラジル、イスラエル、フランスの美術館な どに収蔵されていますが、日本の美術館では東京近代美術館、ブリジストン美術館に収蔵されているそうです。機会があったらぜひ見て下さい。

作品集の写真の一部を送ります。(うまくスキャンできずゆがんでいますが・・・)

2005.11.26   遠矢 浩子記

1960年代の油絵の写真

1962年95,5×128cm 油彩

1967年120×100cm アクリル、コラージュ

1988年105×75cmアクリル

1976年150×150 アクリル