2016年 日本美術会創立70周年記念シンポジウム

日本美術会とともに歩んだ
永井潔の活動と意義を探る

日本美術会創立70周年 永井潔生誕100周年
振り返ることにより 今を照らし出そう

主催:日本美術会 後援:日本民主主義文学会

11月13日(日) 13:30-16:30 

平和と労働センター 2F大ホール

参加費:500円
若くして日本美術会の創立に加わった永井潔(1916~2008)は、以後一貫して会と歩を共にし、民主主義的美術運動の実践と理論の両面において中心的役割を果たしました。日本美術会創立70周年の今年は、はからずも永井潔生誕100周年に当ります。これを機会に彼の活動を振り返ることは、戦後美術運動の歩みを振り返り検証することと重なり、危機と希望の交錯する「今」を見定め、「未来」を見通すことにつながるでしょう。

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●「シンポジウム概要」
開会の辞:鯨井洪(日本美術会代表)
来賓挨拶:田島-(日本民主主義文学会会長)
永井潔の生涯と仕事
北野 輝(美術研究者)
永井絵画とリアリズム
永井芸術論の今日性
上野一郎(美術研究者)
稲沢潤子(作家)
討論とまとめ
挨拶:永井愛(劇作家・演出家)
閉会の辞:佐藤勤(民美所長)
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パネラーのコメントと略歴

北野輝 「永井潔の生涯と仕事」
永井潔さんの生涯における活動は一画家の域を超えて、実践と理論の両面において実に多面的であり、短時間で語り尽くせるものではない。そこでここでは最も重要と思われる一点にしぼり、彼が民主主義的美術運動の出自や現地点の有り様を的確に映し出した「鏡」を遺してくれた点に注目したい。その「鏡」(例えば『あの頃のこと今のこと』など)には、
①日本美術会の多面性を含んだ出自と独自性、
②民主主義的運動体としての開かれた自覚性、
③その「中核規定を持たない多元主義的連帯」という発展的なとらえ直し、等が映し出されている。
それらの意義について考えてみたい。
[略歴]1936年生れ。1966年東京芸術大学大学院修士課程修了(美学専攻)。1967年~2002年 和歌山大学その他の教員。日本美術会会員。
根岸君夫 「永井絵画とリアリズム」
プロジェクターによる画像映写を用いつつ、
○ 画家永井潔が生まれるには、どのような経緯と葛藤があったのか。
○ 永井絵画の特徴、魅力とその存在意義について。
○ 人柄その他についてのエピソード。
などについて話したい。
[略歴]1936年 群馬県沼田市生まれ。埼玉大学教育学部美術科卒業。19回日本アンデパンダン展出品、以降継続。1975 年教職を辞し、画業に専念。日本美術会会員。著書画集2篇(秩父事件連作画・油彩画)。
木村勝明 「永井絵画とリアリズム」
60年代高度成長期の生産関係の巨大な変化は、確かに美術にも大きな影響を与えている。もちろん他ジャンルの芸術も例外は無い。井上長三郎さんに「創作方法の転換を要求する」と言われたことも印象に残っている。その事を永井さんに話した時に「創作方法は生産関係の反映である」という発言に繋がったとも思うのだが、それは私の記憶の中で勝手につなげているのかもしれない。
60年代の高度成長の以後、大きな創作方法上の変化は美術作品にも顕著であって、個々の作家の変化を指摘することは容易である。永井さんの溌刺とした新古典主義のヒューマニズムは、方法の転換に向う事は無く、文学、美学上の考察、文化論などへの思索に向ったと思われる。
[略歴]1950年生れ(名古屋)、幼年期から蒲郡市で育つ。1973年日本アンデパンダン展出品(以後毎回)。1995年錦江自然美術展(韓国)出品、以後野外でのインスタレーション作品制作。
上野一郎 「永井芸術論の今日性」
永井さんは芸術の起源と性質の解明に深く切り込んで、芸術が人間と社会にとって必然的な活動であることを示した。そして芸術が形象的認識であって、科学や学問的な認識と共に真実の探求に重要であることを論証して、芸術家に心強さを与えた。世の中を正確に認識するところから、未来も新しい制作も発していく。
また古典的な哲学と常識に裏付けられた反映論の立場から、芸術は仮象であるという見地を解説して、芸術的仮象が現実を正しく強く表現することも説明した。この弁証法的な観点を血肉化すると、自由闊達に創造が展望できるであろう。永井理論の、的確さ、柔軟性、楽しさなどを話したい。
[略歴]1940年福井県生れ。1966年東京芸術大学大学院修士課程美学専攻を修了。1966年~1972年パリ大学博士課程に留学。1973年~2005年金沢美術工芸大学教員。1973年から日本美術会会員。
 
稲沢潤子 「永井芸術論の今日性」
あるとき永井さんに「広津和郎は、絵画、音楽、文学さまざまある芸術の中で、文学は人生のすぐ左隣りにある芸術だといっていますが…」と話したところ、「ああ、でもミケランジェロなら人生のすぐ隣りは美術だといったろうね」とたちどころに涼しい顔で切り返されてしまった。永井さんも経験した50年代初頭の厳しい時代に、ある劇団主宰者が「もはや絶望だ」といったとき、ある作家が「もはや希望しかなくなった」といったとか。永井さんの思考はすべて安易な通説を疑い、その歴史に遡って新たな真理に光を当てる。「エンゲルスは空想から科学へといったが、これからの世界は、『科学からふたたび空想へ』が重視されねばならない」という永井さんのことばには、芸術への本来的な信頼がこもっている。
[略歴]1940年東京生れ。名古屋大学文学部哲学科卒。日本民主主義文学会会員。日本文芸家協会会員。「地熱」で第19 回多喜二・百合子賞。小説、ルポルタージュ分野で執筆。近著『大間・新原発を止めろ』(大月書店)。
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→永井潔 のアトリエ
第68回日本アンデパンダン展・イベント  アートフォーラム

アンデバンダン展の源流をさぐる
   ―村山知義と柳瀬正夢―

3月29日(日) 12:30開場13:00開場/美術館講堂にて
講師
水沢勉氏(神奈川県立近代美術館館長)13:10-
「村山知義、ふたたび 多様な価値が共存するために」
武居利史氏(府中市美術館学芸員/美術評論家)14:40-
「柳瀬正夢 多様なメディアを貫くアクティヴィズム」

村山知義、ふたたび多様な価値が共存するために

水沢勉(神奈川県立近代美術館館長)
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大正時代末にまさに世間を騒がせた「マヴォイスト」のひとり、若き村山知義(1901-1977)は、戦後、大衆的な小説家として予想もしないような成功に浴することになる。

1960年11月から1962年5月まで『赤旗』日曜版に連載した長編小説「忍びの者」が大きな評判を呼んだことである。現在、岩波現代文庫の5冊として出版されている。

今回、初期のベルリン滞在期の村山が、中欧の大都市で出会ったさまざまな芸術的な諸傾向がどのように日本へと移植され、先行する未来派美術協会との関係で、ダダ的な方向へと急激に加速させたことはすでに史実を踏まえて議論が試みられてきた。その後、演劇へと主要な関心を集中させ、やがてプロレタリア美術運動との関わりを深めるなか、「転向」へと至ることになる。それは、20世紀の最初の年に生まれ、表現者としてなんども屈折を余儀なくされた村山が、当人も予想しないような、はじめての大衆的な成功であつた。この長編は60歳前後の円熟期の村山の集大成という性格も備えていると考えられるが、いままで、そのことを正面から論じたことはあまりなかった。

Forum2015 21922年のベルリン時代の典型的な作例である《ニッディ・インペコーフェンによって踊られた『お気に召すまま』》は、村山知義が受容したさまざまな美術的影響を考えるときに、きわめてユニークな性格を備えているように思われる。まだ構成主義的な要素は明確ではないものの、ベルリンでの、あるいは、同時期の日本での、どのような美術表現とも隔絶した特異な作品というべきであろう。

わたしの話では、1922年のこの作品と1962年の小説と対置して、その懸隔と、そのあいだに密かに繋がるものを測りながら、村山知義における「大衆」の問題、そして、アンデパンダン形式の日本での最初の試みである中原実の画廊九段での「無選首都展」にも言及し、美術展というものが「大衆」との関わりを持とうとした1934年の東京堂画廊での「版画アンデバンダン展」にも触れてみたい。

 

柳瀬正夢 多様なメディアを貫くアクティヴィズム

武居利史(府中市美術館学芸員/美術評論家)

45年の短い生涯のあいだに膨大な仕事をした柳瀬正夢。油彩、水彩、素描など絵画、漫画や挿絵、ポスターのデザインや本の雑誌の装慎、あるいは演劇や写真とのかかわりといった幅広い領域にまたがる多面性が、この多才な作家の仕事を特徴づけている。美術館でたびたび開かれてきた回顧展は、そうした多様性の紹介に重点をおいてきた。

しかし、同時にその多様性に一貫するものは何であるのかを見定めなければ、作家の全貌をとらえることも難しいだろう。多くの画家が作品群を一堂に展観することで見渡せるのとは異なり、柳瀬の場合には一つひとつの作品がその時代の中でどのように機能したかを想像しつつ見なければ、その魅力を十分に味わうことができない。それはその時代の中で生きた芸術表現でもあるからだ。

Forum2015 3多様な作品を通して浮かびあがるのは、芸術活動を通して、社会と向きあい、時代を開くという作家の生き方である。芸術による社会変革を志向したという点で、体制の権威と結びついた美術のあり方、アカデミズムとは対極にある。今日あえていうなら、アート・アクティヴィズムともいえる、作家の態度だろう。それは表現活動を通して市民の公共圏を獲得していく営みであり、メディア自体の創造もその範疇に入る。

柳瀬は、プロレタリア美術の団体に所属はしたが、プロレタリア美術展には出品していない。若いとき公募展に出品もしたが、未来派、マヴォ、三科展を経て、会場芸術にひとまず見切りをつけ、漫画やデザインのような複製芸術の世界にさらなる可能性を見出していった。新聞や雑誌での活動を中心にすえることで、もっとも社会的な影響力を持ちえたのである。それは同時に表現を規制する国家権力とのたたかいでもあった。

Forum2015 4多様なメディアを舞台とするアクティヴィズムは、今日珍しいものではなく、現代美術では大きな潮流でもある。柳瀬の仕事を、近代美術の枠組みで整理し直すのではなく、現代的な視点から、現実世界においてコミュニケーションを成立させる行為の芸術としてとらえ直すことが重要ではないだろうか。どちらかといえば近年は、柳瀬の政治的、思想的な表現を古くさいものとして低く見る傾向が続いてきたが、むしろそこにこそ新しさがあるように思う。

 

 

Forum2015 5柳瀬が社会主義的な無産階級の解放運動へと向かう上で、1923年9月の関東大震災は大きな役割を果たした。2011年3月の東日本大震災の記憶もまだ生々しい私たちにとって、そうした体験の切実さは理解しやすいものとなっている。二つの震災と復興の時代を照らし合わせながら、柳瀬という作家が、新たな複製芸術による表現の探究を通じて、何とたたかおうとしたのかという問題について考えてみたい。

 
014 日本美術会 シンポジウム

危機と美術-21世紀 美術家の創作課題

10月12日(日) 10:00-17:00 

平和と労働センター 2F大ホール

民主的な美術運動の潮流は、今何を目指し、何を課題としているのか。 私たちのまわりに迫るあらゆる危機の中にあって、持てる知見と全ての創造力をもって、 その問いに応えるべく学び、交流を深めましょう。 参加費 1000円

日 程

10月12日(日)10:20開会(10:00受付)

<講演(映像)と討論> 10:20-15:50

●「芸術の歴史的視点から」・・・・・・・10:40-11:30
中世美術を現代に再生すること
講師:上野一郎(金沢美術工芸大、ソルボンヌ大学院)

上野氏は、芸術の歴史を見ていく上で、次のように指摘します。
●過去の歴史から学んで今後の糧にすると言っても、過去は現在からみられたもので、現在の立脚点がどのようであるかによって過去の姿が変わる。また、未来も現在から発して作られて行く以外に無い。
●現在は人が過去を一応否定して、新たな時代を作り上げてきた結果である。創造とは、古い形式が歴史的な内容をもはや包みきれなくなつた時に求められる活動で、脱皮のように成長する。でもそれは、美術では単純に古い形態を捨て去ることではない。
そして、「美術の表現手段について」、「美術の形式と内容について」、「美術の自由と発展について」話はすすみ、
●今日真の歴史的創造では、どのような内容を表現するのか?ヒューマニズムを踏まえた人間観、社会観、世界観を持って、危機と標された現実を正確に深く把握することが歴史の進むべき方向=未来を見出す鍵であろう。これは新しい価値を求めること、理想を求めることとも言えるだろう。と強調し、その一助として西洋の中世美術の一端を紹介します。

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 コーディネーター:木村勝明(インスタレーション作家)

質疑・討論 11:30-12:00

<昼休み>

●「戦後美術・アンデパンダンの歴史から」・・・13:00-13:50
アンデパンダン展は3・11でどう変わったか
講師:北野輝(元和歌山大、日美理論部長)

北野輝氏は、●「戦争する国」「企業が世界一活動しやすい国」づくりを目指す強権的な安倍政権によって、日本はいま戦後民主主義最大の危機に直面している。この「危機」は日本一国のことにとどまらず、地球規模、人類史的規模である。
と警鐘をならし、危機打開の可能性、希望はどこにあるか。と問題提起し、とりわけ反原発などの運動に見られる「中核を持たない多元主義的連帯」や、日本美術会の創立宣言にある「党派流派を超えた大結集」の立場の大切さを再確認します。そして、
●日本アンデバンダン展の歴史的歩みを大局的に見て、表現の「多様性」(~1970年代)から「多元性」(1980年代~)へと転じてきた。とし、その上で、
●3.11とその後の過酷な事態は、美術の限界と可能性や表現の多面性等を垣間見せたこと、さらには、美術存立の可能性を揺さぶりつつこれまでの対応力を越えたものとして表現者の前に立ちはだかっていること、過酷な現実に対応するイメージ形成のあり方が問われたり、完成度の高い作品世界が現実や内面の実相(深層)に届ききれずに自己完結してはいないかと、問いかけます。そして、●「多元主義的連帯」を体現する展覧会として、アンデバンダン展のあり方を根本的に再検討する必要にも迫られているのではないかと指摘します。

コーディネーター:宮下泉(洋画家)

質疑・討論 13:50-14:20

休憩 14:20-14:30

●「感性の変容と芸術-日本の文化芸術の現状をふまえて」・・14:30-15:20
現代美術の失敗と危機
講師:荒木國臣(椙山女学園大、元民主文学会)

荒木氏は、現代における感性の変容について、
●新自由主義と情報化社会のなかで、感性が劇的に変容している-仮想現実と現実の境界の融解と語り、真実をほんとうに見ぬくには
●1.「自分の頭で考え、意味を問う」
2.「突き放してみる」
3.「我がコトとしてみる」
4.「論理的に考える」
ことの大切さを指摘します。
そして、
「突き放し、距離を置いて。冷静に、ごまかさないで見ると、日本のなにが見えてくるか?を問うなかで、
●誰のために、なにを、どう表現するか?
として、次の諸点をあげ、現代美術の失敗と危機を語ります。
●1.「主題芸術、目的芸術を救いだす」
2.「美意識の拠点としての市民と地域内発性」
3.越境表現とコラボレーションの可能性」
4.「批判的電脳芸術の可能性」
5.「リアリズムの新しい展開」
6.批評の再構築

 

コーディネーター:稲井田勇二(日本画家)

休憩 15:50-16:00

<まとめの討論>16:00-16:45

(総合司会:川原康男、山口さざ子)

<懇親会>17:00-9Fアトリエにて 参加費無料

 

日本美術会事務所 ●JR御茶ノ水駅下車徒歩5分 ●東京メトロ丸の内線御茶ノ水駅下車4分 ●東京メトロ干代田線新御茶ノ水駅下車7分

 

申込み

◎下記事項を記入し、日美事務局までファックスまたは郵送してください。

◎参加費1000円は郵便振込で早めに納入をお願いします。

◎振込み確認次第参加券をお送りします。

*昼食弁当は、500円ワンコインで、お茶付き(サービス)です。

*当日の販売や申し込みはありません。

 

◆申込み・問合せ:日本美術会

〒113-0034東京都文京区湯島2-4-4 平和と労働センター内

Tel 03-5842-5665 Fax 03-5842-5666

郵便振替 00160-7-85881 日本美術会